津波避難地下シェルター研究室

コンクリートの解説( Characteristic of concrete )


鉄筋コンクリートについての解説
ここでは、コンクリート製の部位について考察する。


 当研究室のシェルター本体は、基本的に地下に埋設式のものが殆
どである。しかし、

脱出のために一部が地上に吐出して存在する部分もある。


 そこで、地上部と地下部に分けて解説をする。


1) 地上部


 基本的に鉄筋コンクリート製であり、震災瓦礫からの衝撃に対抗す
るための構造物である。壁厚は、
幅30cm程度を想定している。


 その根拠は、東日本大震災で残存した小学校の教室や体育館等の
壁厚が30cm程度であったことを根拠とした。


 また、鉄筋コンクリートという材質上で30cm以上にすると乾燥ひび割
熱膨張ひび割れを発生しやすくなる。


 この比較的に初期に発生するひび割れが、コンクリート壁を貫通し
たひび割れ
に成長する可能性が大きい。


そして、水密性が失われる結果となる。


また、この地上部が建物内と建物外にある場合にもさらに検討が必要
である。



(a)屋内設置の場合


 比較的外気にさらされることがないので、コンクリート表面の中性化
による劣化速度が通常程度と予測されるので、長期強度が十分に確
保される。


(b)屋外設置の場合


 この場合は、外気温変化、酸性雨、塩害、有害大気にさらされるの
で対策を講じる 必要がある


@外気温変化


 昨今の猛暑により、夏季の日中温度40℃に近いと、コンクリートの
屋上面は65℃に到達する。そうなると、膨張率が大きくなり日没後の
温度低下により、コンクリート自体が収縮する。


 この膨張と収縮の繰り返しにより、ひび割れが容易に発生する。


 コンクリートの密実性を高くする配合設計や繊維補強コンクリート
使用または、
耐膨張性能を有したコンクリートを使用する必要がある。


A酸性雨


 酸性度の高い雨が当たることにより、コンクリートの中性化が速くな
る。コンクリートの表面だけでなく、内部の鉄筋腐食の時期が早くな
る。


 40〜50年の耐用年数を予定しているので、耐用年数の以前にコンク
リートの強度が

低下してしまう。そのために、外部に塗装被で覆う工事を行う。


 水性アクリル塗膜油性ウレタン塗膜など一般建築で使用されてい
るものを流用する。

ただし、10〜12年ごとに塗装改修工事が必要となる。


B塩害


 とくに海岸に近い地域では、大気中の塩分濃度が高い。塩によって
コンクリートの中性化の速度がはやくなり、内部の鉄筋腐食の磁気が
はやくなる。


 塩害対策は、高炉セメントB種を使用することにより、耐腐食性能を
高めることができる。


 ただし、型枠の養生期間が長いので、全体の工期が2割程度長くな
る。


C有害大気


酸性雨、塩害対策と同じ対策が必要となる。塗膜塗装以外にもコンク
リート表面に浸透させる
シラン系含浸剤が開発されているが、塗膜に
比べると材料費が3倍近いので、経済的余裕があれば含浸剤を使用
する工法も有効である。



2) 地下部



 地上に設置される場合よりは、大気中の二酸化炭素と接する機会が
少ないので、地下水と埋戻しによる土圧に特に注意を必要とする。


(a)地下水


 地中内には、地下水が存在するのは当然のことである。しかし、地
下水位が高い場所においては、コンクリートの外側から水が浸透する
場合があるので、事前に対策を講じる必要がある。


@防水工事


 コンクリートの外側又は内側面に防水工事を行うことである。

アスファルトウレタン防水等があり、各メーカーの仕様で順次に施工
する。


A止水板


 コンクリート打設時にゴム系、樹脂系の止水板を内部に埋め込む工
法である。型枠の成形上、直角形状の継ぎ目が弱点となり、そこから
水が浸入するので事前に型枠設置時に事前に埋め込む。


(b)土圧


 地中に埋設した後、一般土で埋戻しを行う。この埋戻しに係る土圧
がシェルター本体、シェルタードックに影響する。


 その他に、津波が到来時には、平面積あたり1トンの荷重がのしか
かる。つまり20mの水深であれば、20,000kg/m2の荷重が覆い掛か
る。


3) コンクリートを多用した理由


 鉄筋コンクリート材は、建築工事に於いても比較的に安価な材料
ある。しかし、生コンクリートの打設の段階から硬化するまでの間に小
まめに
管理する必要がある。


 以下にその詳細を明記してみる。


 (ア) 生コンを打設する直前には、型枠内部を水浸しにすることが必
要である。


 (イ) ミキサー車から生コンを排出する直前に、ミキサー車のドラム
全開で回転させ、内部の生コンクリートを均一にする。


 (ウ) 振動用のバイブレーターで生コンを横方向に移動させない。ま
た、一度に3〜5秒以上同一箇所でバイブレーターを挿入しない。


 (エ) 生コン打設後は、表面の急激な乾燥や冬季における凍結防止
のために、養生シートで
表面を覆う


 (オ) 生コン打設後の12〜24時間以後にコンクリート表面に散水す
る必要がある。夏季の場合には表面の乾燥が早いので
十分に散水
る必要がある。



  以上の様に、最低限度のものを表示した。